大企業で始まりつつある試行錯誤。AIが奪った「育成の階段」とグローバル化の試練【2/3回】

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大企業で始まりつつある試行錯誤。AIが奪った「育成の階段」とグローバル化の試練【2/3回】

2026/10/28

山本の部屋

大企業で始まりつつある試行錯誤。AIが奪った「育成の階段」とグローバル化の試練【2/3回】

このコラムでは、北陸人材ネットの代表取締役社長・山本が、日々考えていることなどをお伝えします。

皆さん、こんにちは。北陸人材ネットの山本です。
全3回でお届けしているコラムの第2回です。

前回は、少子化の中でも大学数・大学生数が増え続けている日本の構造に触れ、「アメリカのように新卒採用枠が即座にゼロになることはない」というお話をしました。

では、日本の新卒採用は完全に安泰なのでしょうか?
実は今、一部の大手企業を中心に、静かな、しかし確実な「手探りの動き」が始まっています。

パラダイムシフトの中で始まった「厳選採用」という試み

ニュース等でも報道され始めていますが、大手IT企業や金融、コンサルティングファームなどの一部では、新卒の採用数を絞り込み、より優秀な層を厳選して採用する動きが出てきています。
勘違いしていただきたくないのは、これが「今後の確定した未来」でもなければ「業界の決定的な正解」でもないということです。
生成AIの登場という、これまでのビジネスの前提を根本から覆す巨大なパラダイムシフトに対し、どう対応すべきかを模索する中で生まれた「企業側の一つの試み(実験)」に過ぎません。

この厳選採用には、企業側にとってのメリットとデメリットが明確に存在します。

メリットは、少子化の中で採用者の質を下げずに済むことです。学生の絶対数が減り続ける日本において、無理に採用予定人数を追うのではなく、枠を絞ることで一定水準以上の優秀な人材だけを確保できるという側面があります。
一方でデメリットは、「従来型の育成の階段が消失したことに対する、根本的な解決策にはなっていない」という点です。

「雑用」は、プロへ育つためのステップだった

これまでの日本企業では、新人は入社するとまず、会議の議事録作成、過去データの収集、資料作成の下準備、電話対応といった業務を任されていました。

一見すると誰でもできる雑用ですが、新人はこれらを通じて「会社のビジネスの流れや業界の言葉を覚える」「先輩の考え方や判断基準を学ぶ」「社内の人間関係を構築する」という、社会人としての基礎(暗黙知)を身につけていました。
つまり雑務とは、プロへと育つための「育成の階段(下積み)」だったのです。

ところが、こうした定型作業は生成AIが最も得意とする領域になり、新人が数時間かける仕事を数分で終わらせてしまいます。
結果として「新人に任せる初期業務がない」という壁にぶち当たり、大企業は「とりあえず育てる人数を絞ってみる(厳選採用する)」という、いわば対症療法的なアプローチを取り始めているのが現状です。

企業の「育成アップデート」と、日本人学生に訪れる「厳選の波」

この育成の階段の消失は、意外な方向へ展開する可能性を秘めています。

実は、従来の「雑務を通じて先輩の背中から学ぶ」「空気を読んで人間関係を構築する」という日本式の育成方式は、日本人には馴染みやすい反面、言語化されていないブラックボックスであり、海外出身者には極めて理解しづらいものでした。

もし企業がAI導入を機に、この曖昧だった育成ステップを言語化・マニュアル化し、新しい時代の育成モデルへアップデートできればどうなるでしょう。
企業にとっては、国籍を問わず多様な人材をスムーズに育てられる「新卒採用のグローバル化への最適解」を手に入れることになります。

しかし、これは日本の就活生や学生にとっては非常にシビアな状況を意味します。
これまでの「日本人であり、ポテンシャルがある」というだけで優遇されていた枠が外れ、世界中の優秀な学生と同じ土俵で競い合わなければならなくなるからです。

企業にとっても諸刃の剣――「終身雇用」の完全なる崩壊

では、このグローバル化と厳選採用が進むことは、企業にとって万々歳の未来なのでしょうか。
実は決してそうとも言えません。

国籍を問わず優秀な層を厳選採用し、明確なステップで育成するというスタイルは、必然的に「市場価値の高いプロフェッショナル」を育てることになります。
そうなると、まだ日本のビジネス社会にうっすらと残っている「終身雇用」という前提が完全に崩れ去ってしまうという大きな懸念が生じます。

手塩にかけて育てた優秀な人材ほど、社内にとどまらずより良い条件を求めて流動していく。
企業にとっては「新卒を一括採用し、生え抜きとして長く自社に囲い込む」という従来の恩恵を完全に手放すことを意味し、採用と定着のコストが跳ね上がるリスクを抱え込むことになるのです。

まだ誰も正解を持っていない

「じゃあ学生や企業はどう対策すればいいんですか?」と思われるかもしれません。
正直に申し上げますと、「こうすれば絶対に大丈夫」という明確な答えは、現時点では世界中どこにも存在しません。

AIの進化スピードがあまりにも早いため、超大手企業の人事部や経営者であっても、今まさに現場で悩みに悩み、試行錯誤している最中だからです。

「答えがない時代」に突入した中で、この波は今後、どのように私たちの暮らす地方や中小企業へ広がっていくのでしょうか。

最終回となる次回(第3回)は、「地方中小企業への波及と、そこに生まれる大きなチャンス」についてお話しします。

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