2024/11/22
企業様インタビュー【後編】「誰もが生きやすい社会づくり」に向けて。地域課題に挑戦し続ける想いとは|社会福祉法人くるみ様
前編では、社会福祉法人くるみ・岡本理事長が福祉業界に足を踏み入れ、法人を設立するまでの歴史を振り返りました。
後編では、誰もが生きやすい社会づくりをするため、「そもそも普通って何?」という問いから、くるみらしさ、後に続く人たちへの期待までをじっくりお伺いしました。
岡本理事長の想いに迫るインタビュー、後編です。
<企業紹介>
富山県高岡市にある社会福祉法人。支援の必要な方の豊かな一生をサポートすることを目的に設立。
こどもから大人までライフサイクルに応じた「育つ・出会う・経験する・働く・暮らす」をサポートしながら、必要な「サービス・人・しくみ・地域・価値」をつくり、共生社会の実現を目指しています。
3拠点ある施設は、白や木目を基調とした開放的な空間で、良い意味で「福祉施設らしさ」のない設計となっています。
<岡本久子氏 プロフィール>
社会福祉法人くるみ・理事長。
金沢大学を卒業後、入所施設職員として勤務ののち3つの福祉分野NPOの立ち上げに関わり、2013年11月に社会福祉法人くるみを設立。
趣味は読書と旅行。面白いと思ったものはまず見てみる・聞いてみるタイプ。
誰も「普通」ではない。
個性をそのまま受け入れる社会の実現を目指す
— 「岡本さんは興味をお持ちになる範囲が広い」と職員の方からお伺いしています。
岡本理事長
私は元々、違うことを面白いと感じるタイプだったのです。
色々な違いを面白いと思えるのは福祉の分野において良いことだと思っています。
くるみでもそこは大事したい部分ですね。
まさにダイバーシティとインクルージョン(多様な違いを認め、個性を活かす考え方)ですよね。
私見ですが、「普通の人」は社会が作り出した虚構だと思っています。
だって、皆個性がありますよね。
平均値の人なんてほとんどいない。
山本
岡本理事長
私達はたまたまこの仕事で、多様な人や考え方と接する機会が多いのですが、福祉との接点がない人たちは多様性を広げる機会が少ないので、その機会を作ることも私達の役割だと思っています。
そのためには、私たちがどんどん外に出て、「こんな人たちもいるけど、ほらほら全然大丈夫だし、違いが逆に面白いでしょ?」と色々な人がいることを知ってもらえるような働きかけを続けていくことが、社会を変革する小さな一歩になると思います。
「誰もが生きやすい社会づくり」というのが、1番のくるみの理念です。
幸せの正解探しをやめることも大切
個人の価値観として、「こうなるのが幸せだ!」といった一元的な「幸せの正解探し」をやめることも大事ですよね。
山本
岡本理事長
障害を持ったお子さんが生まれた時点で、「良い学校に入学して、良い会社に就職して…」という、お子さんが生まれる前に想定されていたかもしれないタイプの幸せは諦めないといけないような理不尽さを感じる親御さんたちも多いと思います。
でも、そういうお子さんとの関わりの中でしか得られない幸せや学びを得ている方もいます。
岡本理事長
病気や離婚、退職など、人生には思いがけずいろんなことがあります。
でも、自分を他の人と比べることよりも、自分の中に価値観や幸せを作っていくことが大切だと思うので、くるみとしては価値観を広げるお役に立てたらと思っています。
想いを引き継ぐ人たちにこれからを委ねたい
— 組織の継承について、何か考えていらっしゃることはありますか?
実子に継承する社会福祉法人も多いですが、くるみさんとしての想定はありますか?
山本
岡本理事長
自分がこれまで作ってきた建物、事業、人材は、この後続いていく社会の資源だと思っているので、自分のこどもに継がせることは考えたこともありません。
こどもは東京で、自分のやりたい別分野の仕事に進んでいます。
綺麗事かもしれませんが、くるみが社会の資源として続いていくように努力をしてくれる方に、理念と共に引き継いでもらう、というのは設立時の方針でもあるので、そのようにしていきたいと思っています。
前編でも「自己犠牲をしない」というお話がありましたが、そこへのこだわりも含めて引き継がれると良いですよね。
山本
岡本理事長
自己犠牲をしようと思わないのは、自分の力がわずかだと思っているからです。
今の自分が持っている経験やスキルの中で精一杯のことはします。
でも自己犠牲で何とかなるというのは思い上がりだと思っていて、それはスタッフにいつも伝えています。
結局問題を解決できるのはその当事者だけで、私たちは支援しかできないんです。
その方の一生を通してずっと一緒に居る訳ではないからこそ、自立支援が大事ですもんね。
山本
岡本理事長
私たちがどんなに一生懸命寄り添ってもうまく行かないときはあります。
だからそこは割り切らないといけない。
精一杯したけどしょうがない、人を救うなんておこがましいと。
ただ、応援の想いを持ち続け、いつかまたご縁があると思うことは、何もしないよりは良いと思っています。
岡本理事長
若いスタッフたちはその割り切りが苦手な人も多いです。
でもそれはチャレンジすることだから良いことでもあります。
失敗して、また回復して戻ってきてくれれば良いのですが、いたずらに自分を責めすぎてしまうスタッフもいます。
いきなりそんなにうまく行くはずがないので、少しでも前進できているならそれでOKという捉え方が大切です。
他人に寛容で、助け合う組織
— 若いスタッフが多いことも印象的なくるみさんですが、組織運営をする上で意識されていることを教えてください。
岡本理事長
保育や福祉分野は支援のエビデンスが明確ではなく、自分の生育環境が価値観やコミュニケーションの違いを生む部分も大きいので、スタッフ同士の考え方が合わないことも多く、現場の組織運営が本当に難しいのです。
ただ、この点に関しては、くるみは比較的うまくいってると思っています。
利用者さんへの想いがあるというのは共通していて、プラスで他人に対して寛容で柔軟に接することを繰り返しスタッフに伝えています。
職場の中にも色々な人がいるので、その中でワークシェアという考え方を大切にし、お互い得意な部分で補いあって理念を達成しようと言っています。
そのために心がけていることはありますか?
山本
岡本理事長
対応の見本を見せ、その都度、言葉でも伝えるようにしています。
こういう出来事に対しては、法人としてこんな判断と対応をする、ということを皆に分かるように見せて伝えています。
また、気になる対応をしているスタッフに対してはできるだけ時間を置かずに私が直接話をしています。
共有して納得してもらうということを繰り返していますね。
今後組織が大きくなって行くと、直接話をしに行くのが難しくなるかもしれませんね。
山本
岡本理事長
そうですね。
今後少しずつコアメンバーが私の代わりに同じような動きをやってくれると良いなと思っています。
— 今後はどんな組織にしていきたいですか?
岡本理事長
この先も理念共感型の組織であり続けてほしいと願っています。
行政や時代のニーズに柔軟に応えていくことが法人としての役割や価値だと感じており、最近では子育てに悩むお母さんに寄り添う事業や、ヤングケアラー対策に関する事業を始めようとしています。
今後も環境が変化していく中で自分たちがどうあるべきかを自問し、新しいニーズに対応し続けられる組織でありたいと思っています。
スクラップアンドビルドという視点で、今後辞める事業も出てきそうですね。
山本
岡本理事長
今は地域のニーズが自然と集まってくることも多いので、これまでの公益的な活動を通したニーズ集めの動きは減ってくると思います。
ただ、スタッフの楽しみやモチベーションになる部分は残していきたいですね。
より良い共生社会を実現するために、社会の仕組みや枠組みからこぼれそうになっている人たちに寄り添っていく仕組みを作ることは今後も必要ですし、そこの社会的役割を担う組織であり続けたいですし、あとに続いていく人たちにも期待しています。
私たち北陸人材ネットも引き続きいろいろな形でお手伝いできれば良いなと思っております。
本日はありがとうございました。
山本
コンサルタント紹介
(くるみを担当)
北陸人材ネットは、社会福祉法人くるみ様の「採用・教育」パートナーとしてコンサルティングをさせていただいています。実際の研修事例(他社含)についてはこちらをご覧ください。
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